言葉がなかなか出てこない、名前を呼んでも振り向かない、同じ動きを繰り返す——そんな小さな違和感に気づいたとき、頭の中は「気のせいかもしれない」という思いと「やっぱり何かある」という不安の間で揺れ動きます。それは、あなただけの悩みではありません。
ASDを知る
スペクトラムは「程度」ではなく「パターン」
自閉スペクトラム症(ASD)の「スペクトラム」という言葉は、「軽い〜重い」という一直線の程度だと誤解されがちです。しかし実際には、社会性・コミュニケーション・行動・感覚という複数の側面において、それぞれの子が異なる「組み合わせ」を持っているということを意味します。子どもたちは同じ状態の違う段階にいるのではなく、それぞれに異なるパターンで世界とつながっているのです。
お子さまは何かが欠けているのではありません——その子なりのやり方で、世界とつながっているのです。
1〜3歳の8つの早期サイン
1つ2つ当てはまるだけで慌てる必要はありません。ただし、複数のサインが重なり、それが続いているようであれば、専門家による評価をおすすめします。
目を合わせて微笑むことが少ない
名前を呼んでも反応がない
喃語でのやり取りがない/手を振らない/指差しをしない
意味のある言葉が出ない
動作の模倣がない/ごっこ遊びをしない
語彙が10語未満/二語文が出ない
一度獲得した言葉や技能が急に失われる(退行)
特定の物や事柄に強く固執する
3つの中心的な特性
診断の目安であると同時に、日々のサポートを考えるうえでの3つの手がかりでもあります。
社会的コミュニケーション
アイコンタクトが少ない、興味を自分から共有しない、ごっこ遊びが苦手、友だちとの関係づくりに難しさがある。
反復的な行動・こだわり
手をたたく・体を揺らすなどの反復動作、道順や手順への強いこだわり、限定的な興味(電車・数字・特定のアニメなど)、言葉の繰り返し。
感覚の特性
音・光・触覚に対して過敏、あるいは鈍感。特定の衣類や食感を強く拒む。回転する・体を揺らすなどの自己刺激的な行動。
ASDに伴いやすいこと
ASDのあるお子さまの多くが、他の困りごとを一つ以上あわせ持つといわれています。これらに早めに気づいて対応することで、日々の療育がより効果的に進むことがあります。
コミュニケーションとつながり
お子さまの世界に入るための5つの原則
「お子さまを変えよう」とする前に、まず「お子さまと一緒にいる」ことを覚えましょう。
お子さまの興味についていく
お子さまが車輪を回しているなら、あなたもしばらく一緒に回してみましょう——これは「迎合」ではなく、心理学でいう joining(寄り添い)です。
ひと言話したら5秒待つ
ASDのあるお子さまは、反応までに人より長い時間が必要なことがあります。まず待ち、それから繰り返しましょう。
動作+表情+声で伝える
全身を使ってひと言を強調しましょう。お子さまが「見える」ように伝えることが大切です。
質問より、実況コメントを
「これは何色?」と聞くより、「見て、赤い車だね」と言うほうが、お子さまの反応を引き出しやすいことがあります。
アイコンタクトを無理強いしない
無理に目を合わせようとすると、かえって不安を強めることがあります。時間を与えれば、お子さまは自分のやり方で近づいてきます。
お子さまがまだ言葉を話さないとき
言葉が出ないことは、伝えたい気持ちがないということではありません。お子さまに「表現の出口」を用意してあげましょう。国際的な複数の研究では、補助的なコミュニケーション手段を使っても、口頭での言葉の発達を遅らせることはなく、むしろ後押しすることが示されています。
絵カード交換(PECS)
絵を使って意思表示をする方法。早ければ2歳頃から取り入れられます。
視覚的な支援
スケジュール表・選択ボード・気持ちを表すカードなど、抽象的なことを目に見える形にします。
AAC(拡大代替コミュニケーション)
タブレット向けアプリ、コミュニケーションボード、音声生成機器など。
身振り+実物の活用
複数の手段を組み合わせるほうが、一つの方法だけに頼るより効果的です。お子さまは同時にいくつもの方法を使ってよいのです。
反響言語(エコラリア)は、意味のない繰り返しではありません
CMのセリフやアニメの台詞、家族が言った言葉を繰り返す——これはASDのあるお子さまによくみられる「反響言語(エコラリア)」です。機械的な複読ではなく、お子さまが「すでに知っている言葉のかたまり」を使って、一生懸命に表現しようとしている姿なのです。
受け止める
お子さまのエコラリアに乗って会話を続け、それを対話の出発点にしましょう。
場面に合わせる
お子さまが繰り返す言葉を、ふさわしい場面に置き直し、意味を持たせてあげましょう。
置き換えていく
少しずつ、その場面により近い表現に置き換えていきます。
否定しない
「それは違うよ」と言ったり、繰り返すこと自体を止めさせたりしないようにしましょう。
パニック(メルトダウン)≠ かんしゃく
この二つを見分けることは、ASDのあるお子さまの保護者にとって、もっとも重要な判断の一つです。
かんしゃく(Tantrum)
- ・目的がある(何かが欲しい)
- ・あなたが見ているかどうかで変わる
- ・目的が満たされれば収まる
- ・能動的な行動
パニック(Meltdown)
- ・目的はなく、制御を失った状態
- ・周りが見えていない
- ・望みを叶えても収まらない
- ・神経が処理しきれなくなった反応
パニックが起きたときは
- ・刺激を減らす——光・音・人を、できる範囲で遠ざける
- ・理屈で説得しない——お子さまの脳は今、言葉を処理できる状態ではありません
- ・無理に触れない——抱きしめてほしい子もいれば、そうでない子もいます。お子さまの好みに合わせて
- ・1時間以内に振り返る——きっかけを探り、次に備える
家庭療育と学びの場
主な療育アプローチ
いずれも研究に基づいた方法です。「これが一番」というものはなく、お子さまの個性と、支援チームの体制に合わせて選びます。
ABA応用行動分析
構造化された訓練、行動の形成、強化のしくみを用いる。豊富な研究に支えられ、比較的高い頻度の療育に向く。
ESDMアーリースタート・デンバーモデル
0〜5歳向け。ABAの考え方を自然な遊びの中に組み込む。無作為化比較試験でも効果が報告されている。
DIR/フロアタイム
お子さま主導で進め、関係性を優先する。情緒的なつながりを土台とする。
PRT機軸行動発達支援法
お子さま自身の主体性を高めることで、複数の領域のスキルを広げていく。
補習より効く、家庭でできる5つのこと
お子さまが家庭で過ごす時間は、療育機関で過ごす時間よりずっと長いものです。家庭での関わりが、すべての土台になります。
共同注意(Joint attention)
毎日15分、目的を持たない純粋な遊びの時間を。お子さまの興味についていきましょう。
すべてに名前をつける
「りんごを切っているね」と動作を言葉にしながら過ごす。世界に絶えず名前をつけていきましょう。
選択肢を与える
「りんごとバナナ、どっちがいい?」——選ぶことは、表現の第一歩です。
視覚的なスケジュール
一日の予定を絵や写真で示す。先の見通しがあることが、安心につながります。
切り替えの予告
「あと5分」「あと1分」「そろそろ〇〇の時間」——毎回同じ言い方で伝えましょう。
学校・園との連携
「有名な学校」よりも、「柔軟に配慮してくれる学校」を選ぶことが大切です。日本では、特別支援教育の枠組みの中で、お子さまに合わせた支援を相談することができます。
入園・入学前の準備
数ヶ月前から園長・校長や担任と相談を始め、医師の意見書があれば共有し、お子さまの特性と苦手な場面を具体的に伝えておきましょう。
個別の教育支援計画・指導計画
目標、指導方法、評価の見直し時期などを定めた計画です。保護者として作成に関わることができます。
通級指導教室・特別支援教育コーディネーター
通常学級に在籍しながら、必要な時間だけ個別・小集団での指導を受けられる仕組みです。学校の特別支援教育コーディネーターが窓口になります。
支援員・介助員
教室での活動に付き添い、必要な配慮を橋渡しする人です。自治体や学校によって配置の仕組みが異なるため、早めに相談を。
視覚的スケジュール+切り替えの3ステップ
ASDのあるお子さまは「次に何が起きるか」を強く求める傾向があります。視覚的スケジュールは、安心感そのものです。「切り替えの3ステップ」を組み合わせることで、活動の切り替え時の混乱を大きく減らせることがあります。
カウントダウンで予告する
「あと5分」「あと3分」「あと1分」——砂時計や目に見えるタイマーがあるとより伝わりやすくなります。
終わりの合図をつくる
毎回同じ言葉や動作で活動を締めくくります。「おもちゃさん、バイバイ。また今度ね」など。
次への期待を持たせる
次に何をするかを伝え、楽しみを添えて。「次はごはんだよ、大好きな卵焼きがあるよ」。
お子さまは「わがまま」を言っているのではありません——脳がもう少し時間をほしがっているだけなのです。
栄養面からのサポート
知恵の素にできること
知恵の素は、脳の健康を支えることを目的とした機能性食品です。ASDのお子さまのご家庭では、「脳がより働きやすい状態を整える」ための栄養サポートとして位置づけられています。療育やトレーニングそのものの代わりにはなりませんし、必要な医療的対応の代わりにもなりません。
神経細胞膜を
安定させる
エネルギー代謝を
支える
脳内ネットワークの
効率を高める
ご利用いただいたご家庭からは、気持ちの落ち着き・睡眠の質の変化が比較的早い時期(2〜4週間ほど)から感じられた、というお声を多くいただいています。療育の場での取り組みやすさや、注意を向けていられる時間の変化、感覚の負荷が強くかかる場面の頻度についての変化を感じるという声も寄せられています。
大切なお願い:知恵の素は機能性食品であり、医薬品ではありません。医師の指示のもとで行われている治療や療育の代わりにはなりません。取り入れるかどうか、どのように組み合わせるかは、必ず主治医にご相談ください。
変化の記録
ここでご紹介するのは、実際によくみられる経過をもとにした一例です。お子さまによって特性も経過もさまざまで、同じ結果を保証するものではありません。
一例・3歳、早期療育を始めたケース
「初めて自分から『ママ』と呼んでくれました。」
2歳8ヶ月でASDの診断を受けたお子さまのケースです。自発的な言葉がなく、アイコンタクトを避け、長時間タイヤを回し続け、掃除機の音でパニックになっていました。ESDM(週5回)と言語療法、知恵の素2号(就寝前)を組み合わせて取り組んだところ、次のような変化がみられました。
寝つくまでの時間が1時間から20分に短縮
指差しが出始め、母親と3〜5秒のアイコンタクトが取れるように
自発的に「ママ」と呼び、欲しいものに手を伸ばすように
語彙が50語以上に増え、友だちと並んで遊べるように
変化は少しずつ——けれど積み重なれば、新しい可能性になります。
一例・5歳、高機能ASDのケース
「ようやく、泣かずに学校へ行けるようになりました。」
言語能力は高いものの社会的な関わりを避け、騒音でパニックになりやすく、決まった道順に強くこだわる5歳のお子さまのケースです。就学を控えて家族全体が不安を抱えていました。社会性のトレーニング、視覚的スケジュール、支援員のサポート、知恵の素3号(朝)を組み合わせたところ、次のような変化がみられました。
泣かずに登校できるようになり、支援員と協力できるように
1〜2人の友だちの遊びに自分から加われるように
学校生活のリズムに慣れ、「クラスの友だち」ができ始めた
高機能であることは「楽であること」を意味しません——それもまた、見つめられるべき、別のかたちの難しさなのです。
ご利用いただいた保護者の皆さまの声
知恵の素をお使いいただいているご家庭へのアンケート結果です。
75%
1ヶ月以内に睡眠の質の改善を感じた
70%
療育の場での取り組みやすさが増したと感じた
68%
保護者自身の不安が和らぎ、家庭が落ち着いたと感じた
回答者数230名の自己申告によるアンケート結果です。臨床試験ではなく、効果を保証するものではありません。
保護者の皆さまへ
よくある5つの質問
Q. 先天的なものですか、育て方の影響ですか?
A. 主に先天的な遺伝要因と、生まれてすぐの神経発達に関わるとされ、育て方とは関係がないとされています。あなたが何か悪いことをしたわけではありません。
Q. ワクチンが原因ではないのですか?
A. 国際的な大規模研究によって否定されています。ワクチンがASDを引き起こすという結論は支持されていません。
Q. 「治る」ものなのでしょうか?
A. ASDは「治すべき病気」というより、生涯にわたる神経学的な多様性のひとつとして理解されています。ただし、療育や環境的な支援によって、お子さまがより生活しやすくなり、力を発揮しやすくなることは十分にあります。
Q. 知的な発達は遅れたままなのでしょうか?
A. ASDのお子さまの多くは知的発達に遅れがなく、中には平均以上の力を持つ子もいます。知的な遅れがある場合でも、療育によって機能面が向上していくことがあります。
Q. 大きくなったら自立できますか?
A. 支援体制、療育の内容や継続性、あわせ持つ困りごとの有無によって変わります。早期からの療育と、継続的な支援があるお子さまほど、自立の可能性は高まるといわれています。
保護者へのメッセージ
あなたは、何も間違ったことをしていません。
ASDは育て方によって生まれるものではなく、誰か一人の責任でもありません。お子さまはその子なりのやり方で世界とつながろうとしています。あなたがお子さまに近づこうとしていること、それ自体がすでに最良の一歩です。
きょうだいがいるご家庭では、その子たちの気持ちにも目を向けてあげてください。「お兄ちゃん・お姉ちゃんだから」と、しっかりすることを求めすぎないでください。自分の時間を持つ権利があること、そして「弟や妹がこうなったのは、あなたのせいではない」ということを、言葉にして伝えてあげてください。
これから先のことについては、短期的な「改善の度合い」よりも、大人になってからの支援のネットワークのほうがずっと大切です。あなたが今日している小さな一つひとつのことが、お子さまが大人になったときの土台を、少しずつ築いています。
見つめることが、つながりの始まりです。
寄り添うこと、それ自体が、すでにひとつの支えなのです。
今日からできる4つのこと
発達を専門とする医療機関に相談する
小児科・児童精神科など。予約の際に「発達の評価を希望している」旨を伝えるとスムーズです。
正式な診断評価を申し込む
ADOS-2やADI-Rといった国際的な標準評価があります。医療機関でご相談ください。
一つの療育アプローチから始めてみる
ABA・ESDM・DIR・PRT——どれか一つを始めることは、「もう一年待つ」ことよりも、ずっと前進です。
保護者同士のコミュニティとつながる
オンラインの保護者コミュニティ、地域の親の会、発達障害者支援センターなど。一人で抱え込まないでください。
大切なのは、速さよりもペース。あなたが歩みを進めていれば、お子さまもまた、その道を一緒に歩んでいます。
参考資料(クリックして開く)
- American Academy of Pediatrics. Identification, Evaluation, and Management of Children With Autism Spectrum Disorder. Pediatrics, 2020.
- American Academy of Child and Adolescent Psychiatry. Practice Parameter for the Assessment and Treatment of Children and Adolescents With Autism Spectrum Disorder, 2014.
- Dawson G, et al. Randomized, Controlled Trial of an Intervention for Toddlers With Autism: The Early Start Denver Model. Pediatrics, 2010.
- Wong C, et al. Evidence-Based Practices for Children, Youth, and Young Adults With Autism. Autism in Adulthood, 2015.
- Lai MC, Lombardo MV, Baron-Cohen S. Autism. The Lancet, 2014.
- Romski M, et al. Randomized Comparison of Augmented and Nonaugmented Language Interventions for Toddlers With Developmental Delays. Pediatrics, 2010.
- Prizant BM. Communicative Functions of Immediate Echolalia in Autistic Children. Journal of Autism and Developmental Disorders, 1983.
ご利用にあたって:本読本は保護者向けの教育・啓発を目的とした公益読本であり、医学的な診断や治療の助言ではありません。ご家庭の具体的な状況については、必ず医師にご相談ください。知恵の素は機能性食品であり、医薬品による治療や専門的な療育の代替にはなりません。