思春期には、もともと感情の起伏があります。しかしその変化が2週間以上続いたり、いくつものサインが重なって現れたりするときは、それは「反抗期」ではなく、脳からの助けを求める合図かもしれません。この読本では、家庭でよく見られる場面をもとに、サインの見分け方から、話の聴き方、専門的な支援の受け方、家庭でできることまでを順番にまとめました。医師の代わりにはなりませんが、「今夜、子どもにどう声をかければいいか」を考えるきっかけになれば幸いです。
見えているサイン——子どもが変わり始めるとき
思春期の感情の波はめずらしくありません。ただし、変化が2週間以上続く、あるいは複数のサインが同時に出ている場合は、立ち止まって注意深く見てあげる価値があります。
黄色信号——留意して、まず様子を見る
- ・1〜2週間、気分の落ち込みが続き、やる気が出ない
- ・以前好きだったことへの興味が薄れてきた
- ・些細なことでイライラしやすくなった
- ・学習の効率が明らかに落ち、宿題が深夜までかかる
赤色信号——できるだけ早く専門的な評価を
- ・2週間以上、気分の落ち込みや無気力が続いている
- ・登校を拒み、部屋にこもって出てこない
- ・不眠や早朝覚醒、あるいは12時間以上眠り続ける
- ・「自分なんて役に立たない」「生きていても仕方ない」といった自己否定の言葉が出る
- ・自傷や希死念慮についての発言、あるいは身体に傷が見つかる
参考:AACAP臨床実践ガイドライン(2020)、WHO Mental Health Atlas(2023)
三つの現れ方
思春期の情緒の不調は「単純な抑うつ」だけとは限りません。実際にはこの三つの現れ方が入れ替わり立ち替わり、あるいは同時に見られることが多いといわれています。
抑うつの色合い
意欲の低下、興味の喪失、自己評価の低さ。頭痛や腹痛、食欲不振など、身体の不調として表れることも多い。
不安の色合い
持続的な心配、回避、動悸、手の震え。試験前の体調不良や、対人関係からの引きこもりとして現れることも。
易怒の色合い
頻繁なイライラや爆発的な怒り、注意に敏感になる。「悲しみ」よりもよく見られ、しばしば「反抗期」と誤解される。
参考:AACAP(2020)、Thapar A, Lancet(2012)
「学校に行きたくない」と言われたら
不登校の背景は「本人のやる気」の問題とは限りません。多くの場合、情緒・学業・友人関係・身体という複数のシステムが同時に助けを求めているサインです。「行きなさい」「サボるな」と反応する前に、まず「どうして行きたくないのか」を聴いてみてください。
情緒
抑うつや不安による意欲の低下、注意力の散漫。宿題を何度も消しては書き直すなど。
学業
挫折感の積み重ね。苦手な科目に差しかかると回避行動が出る。
友人関係
同級生との関係の緊張、孤立やいじめ。見えにくいが発生頻度の高い要因。
身体
不眠、頭痛や腹痛などの身体化症状、女性の場合は生理に伴う不調。
目安:1週間以上、登校を強く拒む状態が続く場合は、受診による評価をおすすめします。
聴くということ——子どもに寄り添う
「何を言うか」よりも、「どう寄り添うか」の方が大切なことがあります。
まず、立ち止まる
スマートフォンを置き、パソコンを閉じる。「今、私の注意はあなたに向いている」と伝わるように。
感情に名前をつける
すぐに善悪を分析せず、まず「最近、本当に疲れているんだね」とひと言。
評価しない
子どもが話しているあいだは、遮らず、教え諭さず、他の子と比べない。
そばにいる
最後に「そばにいるからね」とひと言——どんな解決策よりも、この言葉が支えになります。
子どもがまず必要としているのは答えではなく、「こんなにつらくてもいい」と許されることです。
その言葉、少し待ってください
善意の励ましが、かえって子どもの心の扉を閉ざしてしまうことがあります。
✗ 考えすぎだよ/気にしすぎ
✓ もう少し聞かせてくれる?
✗ あなたよりもっと大変な子はたくさんいる
✓ 今、本当につらいんだね
✗ 学校ってそんなに嫌なところ?
✓ 最近、学校に行くのがどうしてこんなにしんどくなったの?
✗ たかがテストじゃない
✓ この試験は、あなたにとってどんな意味があるの?
✗ 全部あなたのためを思って
✓ このことで、私にどうしてほしい?
自傷や「消えたい」という言葉について
重く受け止めるべき、しかし避けて通れない話題です。研究によれば、直接的かつ穏やかに尋ねることはリスクを高めません——むしろ、子どもに「話してもいいのだ」と伝えることになります。
こう聞いてみてください
「最近、自分を傷つけたいと思ったり、消えてしまいたいと思ったりすることはある?」
まず関係を落ち着かせ、それから事実を整理する
感情が落ち着くまでは、細かい詮索や説教をしない。
家庭内の危険物を遠ざける
薬は施錠し、刃物はしまい、浴室の鍵はかけないようにする。
24時間以内に専門的な評価を受ける
精神科・心療内科の急患対応に連絡し、子どもを一人にしない。
お子さまに自傷念慮や希死念慮の兆候が見られる場合は、ためらわずすぐに専門家に相談してください。危機時の相談先は本ページ後半にまとめています。
科学的介入という支え
情緒の不調は「気の持ちよう」で解決するものではありません。多くの場合、四つの方向から同時に子どもを支える必要があります。
① 専門的な評価
児童精神科・心療内科での正式な診断と重症度の判断。
② 心理治療
CBT(認知行動療法)、IPT-A(青少年向け対人関係療法)、家族療法、スクールカウンセラーとの連携。
③ 必要に応じた薬物療法
SSRIが第一選択とされることが多く、医師が利益とリスクを評価します。
④ 家庭と生活
関係の修復、生活リズムの立て直し、睡眠・運動・日光を整える。
心理治療は「おしゃべり」だけではありません
きちんとした心理治療は、思春期の情緒問題への中核的な介入のひとつです。通常は週1回程度から始め、6〜12週間を目安に経過を観察します。
CBT(認知行動療法)
「考え方・感情・行動」のつながりに気づき、より柔軟な視点で困難を捉え直す練習をします。
IPT-A(青少年向け対人関係療法)
親、友人、教師といった重要な人間関係に焦点を当て、コミュニケーションや役割の変化への対応を改善します。
家族療法
焦点を「子どもの問題」から「家族の関わり方」へと移し、家庭内のルールや気持ちの伝え方を調整します。
参考:AACAP Practice Parameter(2020)、NICEガイドラインNG134
薬について(SSRI)
保護者の方に特にお伝えしたい3つのことです。
どのような薬か
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、青少年の中等度〜重度のうつ症状に対する第一選択薬のひとつとされています。
効果が現れるまでには時間がかかる
明らかな効果を感じ始めるまで一般に2〜4週間、効果の判定には6〜8週間ほどかかります。開始から数週間は軽い吐き気や頭痛、睡眠の変化が出ることがありますが、多くは自然に軽減します。
気分が良くなっても、完全に回復したとは限らない
気分の改善後も、眠りが浅い、日中疲れやすい、集中しづらいといった症状が残ることがあります。これはよく見られる経過であり、自己判断で服薬をやめる理由にはなりません。
重要:自己判断で薬をやめないでください。気分に大きな波がある場合は、速やかに主治医にご相談ください。
家庭と学校でできること——まず負荷を下げ、それから求める
子どもが情緒の谷から抜け出せるかどうかは、生活のリズムとストレス管理という「土台」にかかっています。
家庭では
- ・まず「テストどうだった?」という質問をやめる
- ・朝晩10分の対話の時間を確保する
- ・評価せず、他の子と比較しない
- ・一日一食は家族そろって食卓を囲む
- ・週末に目的のない散歩の時間を持つ
- ・寝室ではスマートフォンを充電しない
学校では
- ・担任の先生とこまめに連絡を取り合う
- ・必要に応じて欠席や試験延期を相談する
- ・座席の配慮など、刺激を減らす工夫をする
- ・大きな発表の場を一時的に免除してもらう
- ・スクールカウンセラーやソーシャルワーカーに介入してもらう
- ・成績へのプレッシャーを一時的に緩める
原則:まず張りつめた弦をゆるめてから、どう張るかを考える。
毎日できる3つの小さな習慣
当たり前のようですが、情緒を整えるための「基礎工事」とも言える習慣です。
8〜10時間。夜11時前に消灯し、寝室に画面を持ち込まない。週末と平日の起床時間の差は1時間以内に。
30分を週3〜5回。汗ばむ程度の中強度が目安。屋外での運動は屋内より効果的とされています。
朝5〜10分。起床後1時間以内に自然光を浴びることで体内時計が整い、情緒と睡眠の両方によい影響が期待できます。
参考:Mol Psychiatry(2023、運動とうつのメタ解析)
栄養面からの支え——知恵の素にできること
知恵の素は、脳の健康を目的とした機能性食品です。思春期の情緒面の課題においては、「心理治療やSSRIに置き換わるもの」ではなく、それらと並走する栄養面からの補助という位置づけです。神経の炎症、エネルギー代謝、神経の可塑性など、治療のあとに残りやすい部分を支えることを目指しています。
神経の微小環境を整える
エネルギー供給を支える
情報伝達の効率を高める
主な成分
- フェルラ酸(FA)神経炎症の抑制(NF-κB経路)、抗酸化
- アンゼリカエキスエキス脳内の微小循環を支え、情緒とリズムを調整
- PQQ(ピロロキノリンキノン)ミトコンドリアのエネルギー代謝、神経保護
- PS(ホスファチジルセリン)シナプスの情報伝達、認知機能のサポート
機能性食品は医薬品ではなく、薬物療法や心理治療の代わりにはなりません。使用するかどうかは、必ず主治医にご相談ください。
ある家族の歩み
個人が特定されないよう配慮し、仮名で紹介しています。効果には個人差があり、すべての方に同じ経過を保証するものではありません。
高校1年生・ミナさん(仮名)の場合
「お母さんがようやく、食卓でテストの話をしなくなった。」
16歳、中等度のうつと不安を併存すると診断。開始から3週間はSSRIの効果が出るまで時間がかかり、睡眠も改善しにくい状態でした。医師の勧めで知恵の素2(夜用)を併用しながら、CBTと家族間のコミュニケーション調整も並行して行いました。
- 4週目:入眠にかかる時間が約1時間から15分程度に短縮
- 8週目:自ら合唱部への参加を希望し、部屋にこもる時間が減少
- 16週目:母親との関係が目に見えて穏やかになり、テストの話題が緊張の中心ではなくなった
変わったのは子ども一人ではなく、家族全体のリズムでした。
中学3年生・シュンくん(仮名)の場合
「テストの用紙を最後まで書けるようになった。」
14歳、イライラと登校拒否を主訴に受診し、注意力の低下や朝の倦怠感も併存。軽度〜中等度のうつと診断され、医師の評価のもとで次の対応を組み合わせました。
- 薬物療法:SSRI(セルトラリン系)を低用量から開始し、2週間ごとに調整
- 栄養面の補助:倦怠感と注意力に着目し知恵の素3(朝用)を併用
- 心理治療:週1回のCBTを実施、6回目以降は家族との対話ワークも導入
- 学校との連携:4週間の休養を経て段階的に復学、座席や課題量への配慮
半年後、シュンくんは自分から「数学の家庭教師をお願いしたい」と口にしました——この1年、一度も出てこなかった言葉でした。
230名の保護者アンケートより
知恵の素をご利用いただいたご家庭を対象にした、思春期の情緒面に関する実践アンケートの結果です。
75%
1か月以内に入眠までの時間が30分以内に短縮したと回答
75%
子どもの「情緒がより安定した」と回答
50%
注意力や言語コミュニケーションに改善が見られたと回答
サンプル:N=230、自己評価アンケート。臨床的な無作為対照試験ではなく、治療効果を保証するものではありません。
保護者の皆さまへ
あなたは、思っている以上のことをすでにしています。
こうして読本を手に取り、いちばん疲れているときでも、もう少し我が子を理解したいと願うこと——それ自体が、すでにひとつの支えです。
子どもが情緒の谷にいるのは、あなたが何かを間違えたからではなく、子どもの心と身体、そして人間関係が同時に大きく変化する時期にあるからです。
私たちは、すべてを完璧にこなすことはできません。けれど、子どもが暗闇の中にいるとき、ひとりぼっちにしないことはできます。
どうか、ご自身が疲れること、つらく感じることも許してあげてください。あなた自身が安定していることが、子どもにとって「家庭は揺るがない」と感じられる支えになります。
見つめることが、変化の始まり。
寄り添うことが、変化を支える器になる。
保護者からよく寄せられる5つの質問
Q. 思春期が過ぎれば自然に良くなりますか?
A. 自然に軽快するケースもありますが、30〜50%は成人期まで続くとされています。「様子を見るだけ」は必ずしも安全とは言えません。
Q. SSRIは依存性がありますか? 発育への影響は?
A. SSRIは依存性のある薬物には分類されません。医師の指導のもとで適切に使用する限り、現時点で青少年の発育への明らかな悪影響を示す証拠はないとされています。
Q. 子どもが「生きていても仕方ない」と言いました。本気でしょうか?
A. どの言葉も真剣に受け止めてください。直接的に、そして穏やかに尋ね、家庭内の危険物を遠ざけ、24時間以内に専門的な評価を受けてください。
Q. 私の何がいけなかったのでしょうか?
A. 情緒の問題は、誰か一人の責任ではありません。大切なのは原因を追及することではなく、今日からご家族のリズムを一緒に整えていくことです。
Q. 完全に良くなりますか?
A. 適切な治療を受けた多くの青少年は、大きく改善します。完全な回復と社会生活への復帰には時間がかかることもあります。どうかゆっくりとした歩みを見守ってあげてください。
危機のときの相談先
お子さまに自傷や希死念慮、あるいは激しい情緒の崩れが見られる場合、それは本物の医療上の緊急事態です。ためらわず、すぐに助けを求めてください。
連絡の前後にできること:そばに寄り添い、責めない。薬や刃物を遠ざける。「死にたい」という言葉を否定も肯定もせず受け止める。最寄りの医療機関の救急外来へ向かう。
今日から始められる4つのこと
① 専門的な評価を予約する
児童精神科、心療内科、カウンセリングルームなど。オンライン初診でも構いません。
② ペースを落とす
今週、不要不急の予定をひとつ手放してみる——塾や集まり、家族会議など。
③ ひと言の対話から始める
寝る前の10分間、評価せず、教え諭さず、ただ「聴く」。
④ ご自身を大切にする
あなたの睡眠と情緒もまた、子どもが前に進めるかどうかの土台になります。
情緒の谷を抜けるのは短距離走ではなく、ペース配分の要る長い道のりです。
参考資料
- 1. AACAP. Practice Parameter for the Assessment and Treatment of Children and Adolescents With Depressive Disorders, 2020.
- 2. WHO. World Mental Health Report: Transforming mental health for all, 2022.
- 3. Thapar A, Collishaw S, Pine DS, Thapar AK. Depression in adolescence. Lancet, 2012.
- 4. Bridge JA, et al. Clinical response and risk for reported suicidal ideation and suicide attempts in pediatric antidepressant treatment. JAMA, 2007.
- 5. Singh B, et al. Effectiveness of physical activity interventions for improving depression. Mol Psychiatry, 2023.
ご利用にあたって:本読本は親御さん向けの公益読本として、教育目的で無料公開しているものであり、医学的な診断や治療の助言ではありません。お子さまに情緒面の不調や自傷・希死念慮の兆候が見られる場合は、自己判断で先延ばしにせず、速やかに医師または専門機関にご相談ください。